フードデリバリーにもステーブルコインの報酬支払いは広がる?JPYCと物流業界の動きから考察

しん
しん

配達の報酬が、日本円じゃなくなるかもしれないよ。

そう聞いたら、ちょっと身構えませんか?

仮想通貨で支払われるの?

価値が下がったりしない?

今のままじゃダメなの?

そんな疑問が浮かんだ方も多いと思います。

先に言っておくと、今すぐ何かが変わるわけではありません。Uber Eats、出前館、ロケットナウ、menuの出金手数料は今のところ全社無料で、配達員がこの部分で困ることはありません。

ですが、「配達員がどう受け取るか」ではなく「会社側がどう支払うか」という部分で、いま業界の裏側が大きく変わろうとしています。

利益率がギリギリの配送業界にとって、送金コストや資金繰りは会社側の切実な課題です。実はいま、その課題を解決する手段として、物流業界の大手が新しい支払い方法に舵を切り始めました。

この動きがフードデリバリー業界にも波及するのかどうか、現時点で考えられる可能性を整理・考察してみます。

フードデリバリーにも同じ流れが来る可能性がある

先に結論を言います。

ただし、これはあくまで筆者の考察であり、フードデリバリー各社が導入を発表したわけではありません。

「まだ先の話だろう」と思う方こそ、業界の構造がどう変わりつつあるのか、この記事で押さえておいてください。

なぜ「ステーブルコイン払い」が現実味を帯びてきたのか

きっかけは、Amazonの配送を大きく支えている物流大手・AZ-COM丸和ホールディングス(以下、丸和)の発表でした。

ASCII.jpの記事によると、丸和は2026年7月22日、日本円に連動するステーブルコイン「JPYC」を発行するJPYC株式会社と資本業務提携を結んだと発表しました。

JPYC社の株式11万6000株を引き受け、出資額は10億108万円、出資後の議決権保有比率は2.9%になるとされています。

会員向けの便益向上や物流サービス事業の拡大にともない、今後より多くの小口支払いが発生することが見込まれる、との記述があるようです。小口の支払いを迅速化し、手数料の負担を軽減する狙いがあるとみられます。
丸和の関連団体「AZ-COMネットワーク」には、中小の運送会社など約2,968社が会員として参加しており、開示資料では「スマートコントラクト活用による自動化を目指す」ともされているため、配送完了後に自動的にJPYCで支払われるような仕組みが想定されているようです。

丸和の開示資料

ステーブルコインは、一般的に銀行振込より送金コストを抑えられ、着金も短時間で行えるケースがあります(実際の手数料や着金までの時間は、利用するブロックチェーンや企業側の運用方法によって変わります)。

実際にどの頻度で支払うかは企業側の運用方針によりますが、技術的には日次など、より高頻度の支払いにも対応しやすくなる可能性があります。

つまり、利益率の低い配送ビジネスほど、送金コストの削減効果が大きいということです。この構造は、フードデリバリー業界にも共通する部分があると考えられます。

ただし、ここは誤解のないように言っておきたいのですが、フードデリバリー各社がステーブルコイン払いを導入すると発表したわけではありません。あくまで「同じ構造の課題を抱えている以上、同じ解決策に向かう可能性が高い」という予測です。

物流業界という近い業種で先行事例が出てきた今のタイミングだからこそ、予測として現実味が出てきた、というのが正確なところです。

ステーブルコインとは

ステーブルコイン

ステーブルコインとは、法定通貨(円やドルなど)と価値が連動するように設計された電子決済手段のことです。

ビットコインなどの暗号資産と同じ技術を利用していますが、法律上の区分が異なります。

価格が大きく変動する設計ではなく日本円との価値の連動を目指して設計されているため決済や送金の手段として使いやすいという特徴があります。

銀行を介さずにネット上で直接やり取りできる分、送金コストや着金までの時間を大きく減らせる点が注目されています。

JPYCって何?

JPYC

その中でも「JPYC」は、JPYC株式会社が発行する日本円建ての電子決済手段(一般的には円建てステーブルコインとして紹介されることが多い)です。資金決済法に基づく「電子決済手段」として国内で正式に扱われており、国産の円建てステーブルコインとしては初めての存在になります。

2026年7月時点。制度や事業内容は変更される可能性があるため、最新情報はJPYC公式サイトでご確認ください。

フードデリバリー4社はステーブルコインを取り入れるか

丸和の取り組みは、物流会社が協力会社や個人事業主へ支払う委託費を効率化しようというものです。

一方、フードデリバリーも、Uber Eatsや出前館などの運営会社が個人事業主である配達員へ報酬を支払うという点で、基本的な構造はよく似ています。

そのため、物流業界で有効と判断された仕組みが、フードデリバリー業界でも将来的に検討される可能性はあると考えられます。

50,000件以上の配達経験と、日々フードデリバリー各社のシステムに触れてきた筆者の肌感から、フードデリバリー4社がステーブルコインに対応するか、そのスピードを予想してみます。あくまで個人的な見立てですが、参考にしてください。

Uber Eats ▶︎ 導入の可能性は比較的高そう

Uber Eatsは新しい決済手段やインセンティブ制度を頻繁に試すなど、システム面での実験に積極的な会社です。

過去にも、報酬を仮想通貨で支払うことについて配達員へのアンケートを実施したことがありました。(筆者経験)

海外拠点も多く、グローバルでの決済インフラを扱う経験も豊富なため、他社に先駆けて動きやすい土台がすでにあると見ています。

ロケットナウ ▶︎ Uber Eatsに次いで先行する可能性

ロケットナウは組織としては新しく、意思決定のスピードが速い印象があります。配達員獲得の競争力を高める施策を打ち出す姿勢も強いため、出前館のような大手より先に動く可能性があります。

Uber Eatsほどのグローバル基盤はまだない分、比較的早い段階で対応する可能性があると見ています。

出前館 ▶︎ 対応はするが後手に回りそう

出前館はLINEヤフーグループの傘下にあり、意思決定に関わる部署や承認フローが多い分、新しい決済手段への切り替えには時間がかかりやすい構造だと感じています。

最終的には対応すると思われますが、他社の動きを見てからの追随型になる可能性が高いです。

menu ▶︎ 4社の中では最も遅い可能性

menuは4社の中でも配達数・稼働エリアの規模が比較的小さく、送金コスト削減による恩恵も他社ほど大きくないと考えられます。

優先度が上がりにくい分、対応するとしても一番後になる可能性があります。

受け取る側に必要になる「ウォレット」という仕組み

仮に、報酬をブロックチェーン上で直接受け取る仕組みが採用された場合、配達員はそのステーブルコインを受け取る「ウォレット」を持っている必要が出てくる可能性があります。

銀行口座のように、誰でも自動的に持っているものではないからです。

代表的な対応ウォレットの一例として、JPYCに対応しているHashPort Wallet(ハッシュポートウォレット)が挙げられます。

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一般的には、アプリのインストールや本人確認などを行い、ウォレットアドレスを取得する流れになります。対応ウォレットはこれ以外にもあるため、比較しながら自分に合ったものを検討するのがよいと思います。

なお、JPYCは日本円と価値が連動するように設計されていますが、発行体の信用状況や関連法制度が今後変わる可能性もゼロではありません。「絶対に安全」というものではなく、あくまで銀行振込とは違う特徴を持つ決済手段の一つとして理解しておくのがよさそうです。

※プラットフォームによっては、配達員がウォレットを意識しなくても受け取れる仕組みを別途用意する可能性もあります。

波及した場合に考えられる配達員へのメリット

もしフードデリバリー業界にもこの流れが波及した場合、考えられる配達員へのメリットを含む影響をいくつか挙げてみます。

配達という仕事を通して業界の構造がどう動いているかを早めに把握しておくこと自体が、今後の変化に対する柔軟性へのアドバンテージになります。

まとめ

物流業界では、すでにステーブルコインでの支払いが現実のものになりつつあります。この流れがフードデリバリー業界に波及するかどうかは、現時点では予測の域を出ません。

ただ、Uber Eats、ロケットナウ、出前館、menuのどこが先陣を切るにせよ、業界の構造としては同じ課題を抱えている以上、無関係とは言い切れません。

まずはステーブルコインやウォレットの仕組みを知っておくこと。それが、変化があった際に慌てず対応するための配達員が取れる一番シンプルな備えになりそうです。

しんさん
フードデリバリーサポート
オンライン・しんでざいん