フードデリバリー・テイクアウトアプリの「menu」が、2026年9月30日をもってサービスを終了します。
サービス終了後には、menu株式会社も解散・清算される予定です。
2020年4月に始まったmenuは、約6年4カ月にわたってサービスを展開してきました。今回の終了は、利用者だけでなく、menuで配達してきた配達員や加盟店にとっても大きな転換点になります。
特に配達員にとって気になるのは、下記の点でしょう。
この記事では、KDDIの公式発表を確認しながら、menu終了の経緯と配達員への影響を整理します。さらに、実際にmenuで配達してきた側から見たサービスの特徴にも触れ、今回の撤退がフードデリバリーというビジネスに示していることを考えます。
menuは2026年9月30日に終了
KDDIは2026年8月19日、menu株式会社が提供するフードデリバリーサービス「menu」を終了すると発表しました。サービス終了後には、menu株式会社の解散・清算も予定されています。
出典:KDDI ニュースリリース https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr_s-75_4679.html
つまり、今回の発表は一時的なサービス休止ではありません。menuというフードデリバリー事業そのものを終了し、その後に運営会社も解散・清算する予定です。
menu終了までの予定
menu終了までの予定は下記の通りになっています。
| 日程 | 内容 |
|---|---|
| 2026年8月19日 | サービス終了を発表 |
| 2026年8月31日 | KDDIによるmenu株式取得完了予定 |
| 2026年9月30日 | menuサービス終了予定 |
| サービス終了後 | menu株式会社の解散・清算予定 |
KDDIによると、これまでmenuはKDDIとレアゾン・ホールディングスの共同運営体制で事業を拡大してきました。しかし、フードデリバリー市場を取り巻く競争環境の変化や今後の事業見通しを総合的に検討した結果、経営資源の最適配分という観点からサービス終了を決定したとしています。
menuはいつまで注文・配達できる?
利用者と配達員の双方にとって重要なのが、サービス終了までのスケジュールです。menuから案内されている内容では、
- 通常注文:2026年9月30日(水)20:00まで
- 予約注文:2026年9月23日(水)20:00まで
となっています。したがって、9月30日だからといって深夜まで利用できるわけではありません。通常注文は9月30日20:00までが一つの区切りになります。
また、サービス終了に近づくにつれて、配達品質の維持が難しくなった場合など、一部エリアでは予定より早くサービスを終了する可能性も案内されています。
配達員については、9月30日20:00までは通常注文が入る可能性があります。サービス終了までに稼働した分については、従来通り報酬が支払われると案内されています。
なぜmenuは終了するのか?
KDDIはmenu終了の理由について、「フードデリバリー市場を取り巻く競争環境の変化や今後の事業見通しを総合的に検討した結果」と説明しています。
ここは、公式発表とそれ以外の考察を分けて考える必要があります。KDDIは「利用者が少なかった」「赤字だった」といった具体的な理由を公表しているわけではありません。そのため、「menuは赤字だったから撤退した」と断定することはできません。
一方で、フードデリバリーは、利用者を増やせばそれだけで利益が出る事業でもありません。注文を獲得するためのコスト、加盟店を増やすための営業コスト、配達員を確保するための報酬、そして実際に商品を運ぶ配送コスト。これらをすべて成立させながら、事業を継続していく必要があります。
そして、ここからは配達員としてmenuを利用してきた側から見た考察です。
配達員から見たmenuはサービス品質よりコストを重視していた?
配達員の立場からmenuを見ていると、場面によっては、「できるだけ早く届けること」よりも「できるだけコストを抑えて配送すること」に重きを置いているように感じることがありました。
特に気になったのが、遠距離の配達です。遠距離の配達は、配達員にとって時間や燃料などの負担が大きくなります。そのため、報酬と負担が見合わないと感じれば、配達員は注文を受けにくくなります。
実際に配達していると、遠距離の注文がなかなか配達員に決まらず、長時間オファーが残っているように見えるケースがありました。そして、配達員が決まらないまま、最終的に注文そのものがキャンセルになってしまうケースも散見されるようでした。
もちろん、これは一配達員として経験したことであり、menu全体のキャンセル率やサービス終了との因果関係を示すものではありません。ただ、現場から見ると一つの疑問が残ります。
配送コストを抑えることと、注文を確実に届けることは、本当に両立できるのか。
ここは、フードデリバリーというビジネスを考えるうえで非常に重要なポイントだと思います。
※menuが公表した経営方針ではなく、あくまで実際に配達してきた中で感じたことです。
「安く届ける」だけでは注文は成立しない
フードデリバリーでは、注文を獲得すれば売上になるわけではありません。注文を受けた後、店舗 → 配達員 → 利用者 という物流が実際に成立して、初めてサービスが完成します。
例えば、遠距離の注文を低い配送コストで処理しようとしても、その条件で配達員が見つからなければ商品は届けられません。配達員を待つ時間が長くなれば、利用者の満足度にも影響します。さらに、注文自体がキャンセルになれば、せっかく獲得した需要を売上につなげられません。
つまり重要なのは、「1件あたりの配送コストをどこまで下げられるか」だけではなく、「その条件で配達員が実際に動いてくれるか」ということです。これは、配達員として現場を見ているからこそ感じやすい問題だと思います。
デリバリープラットフォームにとって「資金」は体力
ここで、配達員として強く感じることがあります。デリバリープラットフォームにとって、資金は「体力」そのものなのではないか。
フードデリバリーは、サービスを大きくするまでに多くの資金が必要です。
- 利用者を増やすためのキャンペーン
- 加盟店を増やすための営業
- 配達員を確保するための報酬
- システムやサポート体制の維持
サービスを拡大する過程では、すぐに利益が出なくても、こうした投資を続けなければなりません。資金に余裕があれば、多少効率の悪い注文でもサービスを維持しながら、利用者や加盟店を増やしていくことができるでしょう。
一方で、その余裕がなくなれば、報酬やキャンペーンなどの条件を見直さざるを得なくなる。すると配達員が減り、注文を処理する能力が落ち、利用者の満足度にも影響する。こうした循環が起こる可能性があります。
だからこそ、私は配達員として、「デリバリープラットフォームは、資金という体力が資本なのではないか」と感じます。
これは単純に「資金の多い会社が勝つ」という意味ではありません。サービスを維持しながらネットワークを作り、十分な規模に達するまで耐えられるか。その体力が、フードデリバリーでは非常に重要なのだと思います。
限られた資金の中での創意工夫
ただ、前述の「資金は体力」という見方に対して、配達員として実際に見ていたmenuの報酬設計は、資金力に物を言わせたキャンペーン合戦という印象ではありませんでした。
むしろ、配達回数に応じたランク制度によって、稼働量の多い配達員により良い条件を用意する形で、限られた原資の中で報酬にメリハリをつけていたように感じます。全員に一律で高単価をばらまくのではなく、稼働してくれる配達員を優遇することで、配達員の定着とコストのバランスを取ろうとしていたのかもしれません。
一方で、サポート対応や配達員向けアプリについては、品質面で改善の余地を感じる場面が多くありました。アプリの動作にラグが発生したり、案内や問い合わせ対応がスムーズでないと感じたりすることもあり、この点は他の大手サービスと比べて見劣りする印象を持っていました。
こう考えると、menuは「資金力で市場を押し切る」というより、限られたリソースの中で配達員向けの制度面は工夫しつつ、アプリやサポートといったシステム面には十分な投資が回りきっていなかった、というのが現場から見た実感に近いかもしれません。
※筆者の体感であり、menuが公式に説明している評価基準ではありません。
menu終了後、配達員はどうする?
menuで配達してきた人にとって、最も重要なのは9月30日以降の収入です。サービス終了後は、menuからの配達依頼はなくなります。そのため、menuを収入源として利用していた配達員は、終了前から別のサービスを試しておいた方がいいでしょう。
候補となるサービスは複数ありますが、「どこが一番稼げるか」は人によって違います。同じサービスでも、エリア・時間帯・曜日・車両・配達距離・待機時間・キャンペーンによって結果は変わります。そのため、単純に「1件あたりの報酬が高いサービス」を選ぶのではなく、実際に自分のエリアで稼働して比較することが重要です。
ユーザーへの影響
サービス終了後はmenuから注文できなくなります。menuで利用していた店舗についても、menu経由での注文はできなくなります。
いつもの店舗でも他のデリバリーサービスに対応していれば、別のプラットフォームから引き続き注文できます。menuを利用していた人は、サービス終了前に普段利用している店舗がどのサービスに対応しているか確認しておくとよいでしょう。
menuの撤退から見えるフードデリバリー業界
今回のmenu終了で興味深いのは、フードデリバリー市場が単純な「利用者獲得競争」ではなくなっていることです。サービス開始当初は、対応エリアを広げる・加盟店を増やす・利用者を増やす・配達員を増やすことが重要でした。
しかし、一定の規模まで成長した後は、それだけでは足りません。重要になるのは、「増えた注文を、どれだけ効率よく届けられるか」です。
注文を増やしても、1件あたりの配送コストが高ければ利益は残りません。逆に配送コストを削りすぎれば、今度は配達員が注文を受けなくなり、配送そのものが成立しなくなる可能性があります。
つまり、フードデリバリーでは、利用者・加盟店・配達員・プラットフォームの4者を、経済的に成立するポイントへ調整することが重要になります。menuの終了は、こうしたバランスを長期間維持することの難しさを考えさせる出来事です。
menu終了はフードデリバリーの終了?
今回のmenu終了を見て、「フードデリバリーそのものに需要がなくなったのでは?」と考える人もいるかもしれません。しかし、menuの終了だけからそう判断することはできません。料理や日用品を自宅まで届けてもらう需要そのものは残っています。
問題は、需要があることと、その需要を利益の出る形で配送できることは別という点です。
利用者が注文する。店舗が商品を用意する。配達員が注文を受ける。そしてプラットフォームがその全体を維持する。この仕組みを継続的に成立させなければなりません。
menuの終了は、需要の消滅というよりも、フードデリバリーというビジネスを継続的に成立させることの難しさを示しているように見えます。
フードデリバリーは「資金力の競争」から逃れられない
フードデリバリーのプラットフォームには、サービス開始直後から十分な利益を出すことが難しいという特徴があります。利用者を集める。店舗を増やす。配達員を確保する。注文を増やす。配送効率を高める。そして、その間の先行投資を支える。この期間を耐えられるだけの資金力が必要になります。
だからこそ、フードデリバリーでは、資金力そのものが競争力になり得ると考えられます。
ただし、資金があれば必ず勝てるわけでもありません。資金を使ってユーザーを増やしても、利益につなげられなければ、いずれ限界が来ます。逆に、配送コストを抑えて利益を改善しようとしても、配達員が動かなければサービスそのものが成立しません。
結局のところ、「資金力」と「配送効率」と「ユーザー・配達員双方の満足度」を、どこでバランスさせるか。そこにフードデリバリー事業の難しさがあります。
KDDIが今回、終了理由として「競争環境の変化」や「今後の事業見通し」を挙げたことも、こうした市場の難しさを考えるきっかけになります。
まとめ
menuは2026年9月30日にサービスを終了し、その後menu株式会社も解散・清算される予定です。
通常注文は9月30日20:00まで、予約注文は9月23日20:00までと案内されています。KDDIは終了理由について、フードデリバリー市場を取り巻く競争環境の変化や今後の事業見通しを総合的に検討し、経営資源の最適配分という観点から終了を判断したと説明しています。
一方、配達員の視点から見ると、フードデリバリーには「配送コストを抑えること」と「注文を確実に届けること」の間に難しいバランスがあります。遠距離の注文で配達員がなかなか決まらなければ、注文を獲得しても配送まで成立しません。だからこそ、デリバリープラットフォームにとって資金は単なる数字ではなく、サービスを維持し、利用者・加盟店・配達員のネットワークを支える「体力」そのものなのだと思います。
menuの終了は、フードデリバリーの需要がなくなったことを意味するものではありません。むしろこれからは、どれだけ利用者や加盟店を増やせるかだけではなく、「その注文を、配達員が実際に動ける条件で、効率よく、確実に届けながら事業として成立させられるか」が、各社にとってより重要になっていくのではないでしょうか。




